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最新の研究データが教えてくれる9つの子育てのヒント(「学力の経済学」を読んで)

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教育経済学者の中室牧子氏の「学力の経済学」を読みました。

子供たちが幸せになるために、限られた資源の中で、親として何をしてやれるのか。

そんな悩みに手がかりをくれる研究データが広く紹介されており、非常に好感が持てて、説得力がある本でした。

完全に思い込みだった話などもたくさんあったのですが、特に印象に残った9つの話を挙げておきます。

 

 1.どこかの誰かの成功例を真似してもダメ

成功事例に学ぶことは基本だと考えてきたところがあります。

しかし、「統計学が最強の学問である」の中で語られているように、ひとつの事例にすぎないものを、あたかも全体を表しているかのようにとらえてはダメだということです。子供の成功には実にたくさんの要因が影響しているので、単純に成功した人の体験記を読んで部分的に真似をしても成功する保証はないのです。

なんとなく、近所の優秀なお姉ちゃんところの真似をしてみてはどうかと思うときがありますが、意味がないということですね。

筆者は、だからこそ、多量のデータで規則性を見出すことが大切だと語ってます。

 

2.ご褒美はインプットに対して与えるべき

今勉強すれば将来のためになる。

経済的には、今投資すれば、大人になってからの収入が高まるというちょっとクールな話は間違ってないそうですが、それはわかっていても、目先の利益が大きく見えて、ついつい遊んでしまう。それが人なんですよね。

だから、ご褒美を与えることは目先の利益で勝負するということで、相応の効果があるようです。

ただ、与え方が大切であり、実験で成績が上がったのは、「テストの結果がよければご褒美あげる」というアウトプットに対するご褒美を用意されたグループではなく、「本を読んだら」「この課題を終えれば」というインプットに対するご褒美を与えられたグループだったんですって。

理由は、アウトプットに対するご褒美でも、やる気は出たんだけれど、どうすればテストの結果がよくなるかがわからないというところがネックになったようです。

これは子供を見ていてよくわかります。勉強のやり方というのは、大人になるまでの経験の中で少しずついいやり方を探して身体に染み付いてきたものであって、子供にとっては簡単にわかるものではないのですよね。

ご褒美もいいけれど、まずは方法を教えて導く人の存在が重要ということです。

大人扱いして、子供に考えさせて、自律や工夫とやる気を引き出すのが一番いいという思いがあったのですが、普通の小学生にはそれではちょっとまだキツイということをデータが示しているということです。

やらされ感だけは感じない範囲で、ある程度リードしてあげないと思い直しました。

ちなみに、ご褒美をあまり与えると「勉強そのものが楽しい」という内的インセンティブが失われるんじゃないかという心配がボクにはあったのですが、それにも触れられていて、ハーバード大学のローランド・フライヤー教授の実験とアンケート調査の結果からは、そんな傾向は見られないとのことです。

ここは、ボクの直感とは実は違っていて、勉強は自分の将来のためのものだし、本来楽しいこと。それが、まるでご褒美を得るための仕事のように感じるようになったら、馬力が出ないのではと思ってきたのです。

しかし、自分の仕事で置き換えてみると、確かに仕事は自分のためであるとはいえ、やる気だけをエンジンにするのではしんどいときもあるし、給料もらってても楽しくやりがいを感じることもできる。だから、「自分の将来のため」という意識が根底にあるならば、褒美があっても、まぁ悪影響はそんなにないのかもしれません。ここについては、もう少し考えていきたいと思います。

ちなみに、ご褒美は小学生ならばトロフィーでも十分効果的みたいですよ。そういえば、公文式でも、3学年先を履修したご褒美はトロフィーですね。

 

3.むやみに褒めるべからず

褒めて自尊心を高めることが、勉強の意欲を高め、学力は高まるというのはウソで、学力が高いから自尊心が高いという因果関係のようです。

むやみに褒めると、反省する機会を奪い、実力の伴わないナルシストを生んだという研究結果も得られているとのこと。

根拠なく子供の能力を褒めるのではなく、子供が達成した内容や努力を挙げて具体的に褒めることが、さらなる努力や挑戦を引き出すことにつながるようです。

 

4.テレビやゲームは1日1時間程度なら影響無し

子供って、テレビを見だすと、見続けますよね。

1時間くらいなら、それが勉強時間の増減にそれほど影響しないらしいですが、2時間を超えてくると、「発達や学習への悪影響が飛躍的に大きくなる」とのことです。これは、だいたい感覚と合ってます。

 

5.「勉強しなさい」と言うべからず

母親が娘に「勉強しなさい」というのは逆効果というデータがありました。

これは、ウチの家庭を見ていても、うなずけるものです。

手間暇はかかりますが、誰かが「勉強を見る」「勉強時間を決めて守らせる」ということが効果があるようです。そりゃそうでしょうが、なかなか大変で、なんとか自律を!という思いもあったのですが、幻想なのかもしれません。

筆者は触れてませんが、データ(図13)を見ていると、母親が「勉強したかを確認すること」と、父親が「勉強するように言うこと」は、そこそこ効果がありそうです。

 

6.習熟度別のクラス分けが効果的

レベルの高すぎるグループに子供を無理に入れることは逆効果になる可能性あるようです。自信を喪失するというのが理由です。

一方、同じレベルの子供達はプラスの影響を与え合うとのことです。学習塾などがレベルに応じてクラス分けをしているのは合理的ということですね(学力格差が拡大してしまうリスクはあるようですが)。

ちなみに、問題児と一緒にいると、問題行動を起こす確率は17%も高くなるというデータもあり、親としてはむしろこちらが気になってしまうところです。環境がよくなければ、思い切って引っ越せというところまで書いてあります。そういう雑多な環境の中で、自分を見失わずに、強くなりながら成長できれば一番良いと思いますが。

 

7.最も教育の収益率が高いのは就学前

将来の子供の収入を増やすために、いつ教育のお金をかけるのが効率的かという研究では、「就学前」という見解でまとまっているようです。

これは、ノーベル経済学賞を受賞したヘックマン教授の「幼児教育の経済学」で詳しく述べられていることです(ヘックマン教授の図(6ページ目参照))。

井深大氏は、幼稚園でも遅いと言ってましたが(幼児教育が幼稚園では遅すぎる理由 )、ヘックマンは、ペリー幼稚園という幼児教育の実験を行った子供たちを40年追いかけて、この傾向を結論付けているわけですから、無視し得ないですね。

だけど、特別な幼児教育を受けた子供たちは、確かに学力やIQは小学校入学時には大きくリードしていたけれど、8歳くらいで差はなくなったらしいです。しかし、学歴や年収など、その後の人生には差を生んでいる。

それはなぜかというと、忍耐力や社会性や意欲、自制心、好奇心、誠実さ、やり抜く力など「非認知能力」と呼ばれるものを高めるのにペリー幼稚園が役立ったからということです。

人生の成功において極めて重要なのは、学力というよりも「非認知能力」であり、これは勉強というよりも、人から学ぶもののようです。ペリー幼稚園の何がこの「非認知能力」を高めたのか、気になりますね。

結局、やり抜く力が大切というのは、ペンシルバニア大学のダックワース准教授もTEDで語っていたものです。

 

8.非認知能力は鍛え続けられる

幼児期が効率は良いとはいえ、非認知能力は成人になっても鍛えられるようです。

自制心は、しつけで鍛えられます。例えば、「背筋を伸ばせ」というようなことを言い、はっと気づかせて実行させるということを繰り返すことで、鍛えられるようです。

あとは、「計画を立てて、達成度を管理すること」も有効なのだとか。

「やり抜く力」は、「自分の能力は生まれつきのものではなく、努力によって伸ばすことができる」と信じるような心の持ちようで強められるようです。逆に、自分はできないということを刷り込まれると、本当にできなくなってしまうのだとか。サーカスの象が本気を出せば、手綱が結ばれた杭を引き抜けるのに、自分にはできないと思い込んでいるから逃げないというのと同じかもしれませんね。

部活動や課外活動なども、非認知能力を鍛える手段になりうるということです。

もしかしたら、学力というよりも非認知能力を高めるということが、学校の大きな役割なのかもしれませんね。

 

9.行き過ぎた平等主義は思いやりを失わせる

人の能力には差がないという考えに基づく平等主義。いっけん正しいように思えますが、うまくいってない人間を思いやれない子供を生み出しがちになるらしいです。

成功には、遺伝や家庭の資源や良い先生との出会いなどのどうしようもない要因が影響しているのが現実なのに、成功しえないのは、努力を怠っているからだという考えに至りやすくなってしまう。

能力に差はないんだから、だれでも努力次第で成功できる。そう言って励ましてあげたいんだけれど、成功しているやつにそう言い過ぎてしまうといけないということなんですかね。 

 

おわりに〜もっと科学的な議論でモノゴトを決めよう

以上、ボクの思い込みがばっくりと覆された話ややっぱりそうだったんだ〜という話を9つ挙げてみました。

この本は教育経済学の話ですが、日本の科学リテラシーを問うという重要なテーマが隠れています。

主観で判断して道を間違うという話が世間にはごろごろしています。日本の重要な政策さえも、主観や雰囲気で決まっているのです。

また、相関関係と因果関係は違うというところにも気をつけて物事を見ていく必要があります。

本をたくさん読む子は成績が良い。という相関関係があったとしても、本を読むから成績が良くなったという因果関係にあるとは限りません。

科学的なアプローチで、データをもって議論し、判断していくという姿勢が、日本の教育には足りなすぎるというのが筆者の隠れた主張のようですが、教育だけではなくて、さまざまな政策や会社の決定には、そういう話があふれています。きっと、既得権益を守ろうとかいう話の中で、なんとなく都合の良い論理を作り上げていく風潮が根付いているのではないでしょうか。

そういう科学的なモノの見方やアプローチができる人間を増やすためにも、教育というのは大切なテーマなのだと思います。

 

この本は、他にもさまざまなテーマを挙げていますし、データも引用文献もしっかりしています。さすが、ビジネス書ランキングでもトップ10入りをキープしているだけのことはありますので、気になった方はぜひ読んでみてください。

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