(写真 Amazonのホームページより)
これまでにない家電を創り出すバルミューダのことをもっと知りたくなり、「バルミューダ 奇跡のデザイン経営」を読んでみました。
バルミューダという会社のこだわりや考え方、成長過程をはじめ、製品の美しい写真や開発過程のメモなどが載せられていて、良かったです。
この本から、気になった4つのことについて書きます。
「性能」より「感じられる良さ」を追求する
バルミューダは、製品の機能というよりも、それによって「感じられる良さ」を追求しているという。「機能」や「性能」は、そのための手段なのです。
「この感じ、いいなあ」という感覚は、時間が経っても変わらない価値になる。
そして、人間は人それぞれいいと思うものは違うんだけど、やはり根っこは同じであり、いいものは、結構グローバルに通用するのです。
これは、スティーブ・ジョブズのアップルも大切にしていた考え方らしい。
ただ、手段とはいえ、彼らが提供する「驚き」や「新しい体験」を支える「機能」や「性能」は、斬新でハイレベルだ。
それなのに、あくまで目的は「感じられる良さ」なのです。
我々はこれまで、その手段を目的と勘違いしてきたのかもしれない。
生命線である「センス」を磨く方法
「いい感じ」。そういう捉えどころのないものを求め、デザインを決めていくためには、センスがないといけない。
それが、バルミューダの生命線である。
しかし、どうすればセンスを磨くことができるのだろう。
前回の記事に、寺尾社長の発言からボクが感じたことを次のように書きました。
寺尾さんの話を聞いていると、問題意識を持つために、次の2つが必要なのだと感じました。
(バルミューダの家電開発にみるイノベーションの必要条件)
- これからの世界を見据えて、何が必要になるかを考えること
- 心地よいものと心地わるいものをよく感じながら生きること
扇風機の風を変えたいと思うなんて、よほど普段「心地よさ」にこだわり、「よく感じながら生きている」んだなあと思っていたのですが、そのあたりが、もう少し突っ込んで、この本には書かれていました。
センスを磨くために日々心掛けているのは、身の回りのモノをよく見ることだ。「観察しながら、本当に良いものは何か、皆が好きなものや多くの人が良いと感じる状態はどのようなものかを分析する」。
「自分自身が心地良いと感じ、嬉しい気分になったとき、自分に何が生じているのかという原因を考える。」
気持ちいい!と感じた時に、匂い、味、香、音、触覚に意識を向け、覚えておくのだそうだ。それが、5感、つまり、センスを磨き続ける方法なのです。
これからのデザイン思考では、右脳と左脳をバランスよく用いることが重要ということだが(21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由)、まさにそれを実践しているお手本のようです。
シンプルだが訴えかけてくるデザイン
バルミュ ーダのデザインは 、ただシンプルであることが目的ではありません 。そのシンプルさを通じ 、人の心に訴えかける何かがあることが大切なのです 。記憶を呼び起こすには 、デザインばかりが主張しすぎてもいけません 。バルミュ ーダの示す世界観は極めてシンプルですが 、そこには寺尾社長 、そしてバルミュ ーダの 「人間味 」を感じます 。
自己愛を捨てる
寺尾社長のロックのイメージから、もっと自分が欲しいと思うものをひたすら信じて作ってる感じかと思ったのですが、意外に「自己愛」を捨てるという言葉がありました。
自分というよりも、世間が求めるものを作るという意識に変えたところから、あの扇風機がブレークし、会社は急成長したそうです。
そして、
- 自分の培ってきたことにこだわりすぎない。
- デザイナーとしての自分はクビにして他人に任し、デザインのディテールではなく、何を感じたかをデザイナーに伝える役に徹する。
というようなことも書かれていました。
何かを考えたり、作り出したりしていると、どうしても自分の目線になりすぎたり、自分が考えたことが可愛くなってしまうことがあります。
いかに、自分から離れ、客観的な目線で、自分が作っていることを見ることができるか。
何かを生み出す人にとっては、このことがとても重要になります。
単なる豪腕のカリスマ経営者ではなく、そのあたりの冷静さとチームで仕事をすることの大切さを持ち合わせているところが、改めてすごいと、感じました。