■電力会社は予備率3%を確保できる見通し
原子力発電所の再稼働が遅れている。
そういう中で、次のニュースによると、各電力ともなんとか予備率3%を確保できる見通しのようだ。
最大需要に対する供給余力を示す「予備率」は、9社で4・6%、関西電力など中・西日本6社で3・4%だった。安定供給に最低限必要とされる3%は全社上回ったが、関西、九州の両電力は3・0%ちょうどだった。
関西電力がどのように試算しているかについて調べてみた。
関西電力のホームページによると、昨年度に大飯発電所で得ていた236万kWの分を、火力発電所の増設分と他電力からの融通で補う公算のようだ。
■火力発電所の計画外停止リスクは高まっている
関西電力のホームページ(さきほどのpdfファイルの最後のまとめ)によると、法令点検を特例で先延ばししているなど、火力発電所の酷使を続けていることから、計画外停止のリスクについても触れ、厳しい需給状況にあるとしている。
3%というのは87万kWに相当する。
姫路の発電所1基よりは多いものの、何かが重なれば、供給が追い付かない状況になりうる。
■他電力からの融通には時間差があるかもしれない
2013年夏の厳しい状況を振り返ると(下記のブログのとおり)、いったん予備率3%まで行ったあと、他電力からの融通で予備率を確保していったという形になっていた。
こんなに暑かった夏でも関西が停電しなかった理由 | Voyage of Life
この夏、他電力からの融通の話は調整済みということなのだろうが、いざ、各電力会社がみんな厳しい状況になった場合、どれくらい融通できるのか?という判断には時間がかかるかもしれない。
そういう中で、即座に立ち上がり時に対応できるかはとても心配なところである。
■ 需要を減らすしかないのでは?
電力需給対策の必要性などを有識者が話し合う「電力需給検証小委員会」(経済産業省)の報告書とりまとめを受けて、5月の連休明けにも政府が今夏の需給対策を決定するとのことだが、関西電力のホームページからは、需要抑制に向けた取り組みを行うことを醸し出している。
電力会社は、電気事業法第18条第1項に基づく「供給義務」を背負っているので、易々と供給できないなんて言えないのだろう。
しかし、計画外の故障によるものであれば、供給しきれないことが許されるらしい。
そうであれば、電力会社としては、足りるという結論でいくしかないだろう。
(やれることを最大限やられているという努力に感謝)
しかし、電気が急に足りない状況になれば、熱中症などにより犠牲者が出るかもしれない。日本の産業への負担をどこまで許容しながら、そんなに危ない状況を許すのか。これは、経産省の判断になる。
原子力発電所の再稼働に向けては、地震の深さが3.3mだの、3mだのと言い争っているトーンに比べて、火力発電所の故障などの方がよほど可能性がある話だ。去年だって、1か所はしばらく止まっていたはずだ。
リスクをバランスよく取り扱うセンスがあれば、結局は、電力の需要を抑制するような計画停電、または、節電の要請をするという判断になるのではないか。
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それにしても、あれから3年も経つのに、まだこんな状態なのか。
そして、この電力会社の設備投資や火力燃料費による赤字は、いつか取り戻されるために、我々への電気代として乗っかってくると思うと、ぞっとしてしまう。
足りる足りないという論点は、最低限の話だから、そこで安心していてはいけないのだ。