Voyage of Life

3人の子育てパパが日常と読書から学んだコト

「海賊とよばれた男」戦後の日本が失いかけている大切なこと

 

百田尚樹氏の「海賊とよばれた男」を読んだ。

今話題の出光興産の創業者、出光佐三氏をモチーフにし、彼がいかにして戦前戦後をまたぐ激動の時代に会社を経営していったか、どういうことを大事にしていたかという姿が細かく描かれている。

こんな日本人がいたなんて知らなかった。

特に、グッときたところをメモしておく。

 

誘惑に負けず信念を貫け。情熱をたやすな。

鐡造(出光佐三をモチーフにした主人公)は、とにかく熱い人だった。

安易な儲けよりも、それが信念に沿っているかどうかを大切にした。

太平洋戦争に負けて、多くの資源を奪われたときでも、会社のために必死で働き、戦ってきた社員の首は一人も切らないという選択をした。油を売るということにこだわってきた鐡造も、このときばかりは仕事を選ばず、ラジオ修理さえ行った。

また、安易に海外のメジャーの石油会社と手を組んで、石油を入手するルートを確保すれば、価格や量に対する自由度がなくなり、アメリカやイギリスの言いなりになり、日本の真の復興には遠回りになってしまう。

そして、太平洋戦争の教訓として、もしまた戦争が起きてしまったときに、石油を確保するルートを遮断されてしまったら、たちまち苦境に陥ってしまう。

そういう日本のため、日本人のためという大きな信念を何より重視し、日本独自の石油入手ルートを確保することを最優先した。海外メジャーの傘下に入って利益を増やし、また、既得権益を守ろうとする競合他社や協会、それと手を握った役人を敵に回しながらも、GHQに正論で挑んでフェアな戦いの場をつかみ、技術や価格の面で負けない努力をして、チャンスをつかんでいった。

一番象徴的なのは、日章丸事件であろう。

その信念と情熱がなければ、イギリスの攻撃を恐れずに、日章丸をイランに送り、石油を輸入するということなど、できはしなかっただろう。

株主とか株価とか、四半期の利益目標とか、経済指標が強く意識される昨今であるが、こういう別次元の価値観を、見失ってはならないのだと思う。

特に、戦争が起こったらとか、外国が攻めてきたらということへの想定は、「想定外でした」では済まされない。

戦争を忘れるなということで、その悲惨さを高齢の方が伝えていくことはもちろん大事だが、そのような現実的な議論を後回しにするならば、それも、戦争のことを忘れてしまうということなのだと思う。

 

人を信頼する経営

 鐵造は、社員一人一人を家族のように思い、大切にした。タイムカードも定年もなく、社員を信じて任せるからこそ、社員は鐵造の思いに応えようと必死になった。もちろん、その仕事ぶりへの感謝を鐵造はちゃんと伝えた。

その源流は、鐵造の人柄を信じた、ある人物が、創業資金を無償で提供してくれたことにあるのかもしれない。

人を信じる。もし失敗したら、一緒に乞食をやろう。そんな覚悟をまず先にすることで、相手も本気になるのだ。

アメリカのメジャーではない石油会社と対等な契約を決めた時も、鐵造はただ相手を信じるという姿勢を変えず、あなたがYESと言ったのを信じる!立派な契約書なんて要らないという態度だった。

 

ボクはいつの間にか、一緒に仕事する仲間の見解を無条件に信じるのではなく、根拠の説明をまずは求めるという仕事のやり方を基本にするようになっていたが、そこにこだわりすぎる必要はないのだという気持ちになった。

あなたがそう言うならそれを信じます。と言うことが最初にあって、しかし、根拠の資料が求められるから、何か根拠を示せるものはないですかということなのだと改めて思った。

 

 

正義を貫く男が一人でもいれば、間違った世の中にはならない。

 鐵造たちが幾多ものピンチを切り抜け、会社を成長させていくためには、それを支える人たちの協力が不可欠だった。

 

金融危機においても、銀行が貸し付けていた資金の返済を迫らなかったのは、こういう義を持った会社こそ、銀行がサポートすべきと考える1人の担当と、その担当の主張を理解するトップの存在があった。

大型タンカーから製油所への搬送を可能にするための海中配管の建設工事に保険をかけた時も、出光の担当の情熱を感じた保険会社の担当が、もう一度やらせてあげたいと、GOサインを社内で取り付けた。

フェアではない規定に鐵造が抗議した時、その正義を感じ取り、その規定をおかしいと組織の中で毅然と対応する役人がいた。

国の未来をかけた製油所をちゃんと作りあげるという情熱を感じ取り、必死で対応したメーカーの存在があった。

いろいろな業界の人が、プロジェクトを支えていく。そこには、本来どうあるべきかという理想と正義を重んじ、人を信じて動こうという人間の存在が絶対に必要なのだ。

今の世の中でも、そんな正義に対する共感と、人のつながりを期待できるだろうか、、

 

まとめ

こんなすごい日本人が居たのだとほんとに感動した。

「士魂商才」。

この本を読むことで、ボクの仕事への情熱は増したし、もっともっと人を信頼する仕事のやり方をしてみようと思った。 

折しも、出光のシェルとの合併に対して、創業家が反対しているというニュースが世間を賑わしているが、日本は何か大切なことを失いかけてるのかもしれないということを問いかける出来事だと思う。

参考となりそうな動画もリンク先を貼っておきます。