京都大学で客員准教授をつとめ、とても人気の授業をしているという瀧本哲史氏の「武器としての交渉思考(星海社新書)」。
そこには、マッキンゼーやその後の独立活動の中で磨いてきた「交渉」の心構えと基本技術、そして熱い思いが書かれていた。
社会に出て、自分の思いを実現させるには、とにかく他人と話しをして、OKをもらう必要がある。
どうすれば、相手がお願いを聞いてくれるか。どうすれば、いい関係をキープできるか。どうすれば、お客さんがそれでいいよと言ってくれるか。
この本には、そういった交渉における大切なことが、わかりやすくまとまっている。
今日は、この本から学んだ、「これだけは知っておくべき交渉時の8つの基本」について書きます。
これを知っておけば、人生をもっと面白くできるかもしれません。
1.ロマンとソロバンの両方を伝える
複数の人が集まって、一つの目標に進むときには、大きなビジョン(ロマン)と実現させるためのコスト計算(ソロバン)の両方が必要。
ロマンは、長期的、抽象的でもかまわないけれど、ソロバンは具体的で短期的に結果がわかることが望ましい。
確かに、仕事をしていても、熱い思いを伝えなければ、人は動いてくれない。そして、それだけでもだめで、しっかりと計画や今後の展開を伝える必要がある。
ロマンとソロバンという語呂が、すごくいいですね。
2.キーパーソンを味方につける
本当に世の中を動かそうと思うなら、今の社会で権力と財力を握っている人たちを味方につけ、協力を取り付けることが絶対必要だ。
なんだかんだいって、権力者は強い。
ここはクールに対応すべきところだ。
交渉に臨む、社会や組織のネットワーク構造を熟知し、ハブとなるところに交渉によって合意という楔を打ち込む。
それも、同時多発的に行う。
そういうことが大切らしい。
誰が決定の鍵を握っているかを常に意識しよう。
3.自分の立場ではなく、相手の利害に焦点を当てる
僕が可哀想だからどうにかしてと言っても、それで動いてくれるほど慈悲深き人ばかりではない。ビジネスは厳しいのだ。
相手側にいかにメリットのある提案ができるか。
つまり、自分の立場ではなく、相手の立場でモノを考えることが重要である。
相手側の主張を聞き、相手が妥協できると思っていることは何か。欲しがっているものは何かをどれだけ理解できるか、理解しようとするかが大切である。
4.交渉前にほかの選択肢を増やす
交渉は、事前に自分と相手の立場を分析することによって8割方勝負がつく。
交渉に入る前に、他の選択肢を増やし、バトナ(交渉が決裂したときに、自分が取れる最善の選択肢)をなるべく良いものにする努力が、交渉力を高める。有利な立場をとることができる。
「無理ならいいですよ。他に興味がある方もおられますし」みたいなことを言われたら、「ちょ、ちょっと待ってください。」となりますよね。
ビジネスだからウィンウィンは当たり前。問題とすべきは、どれくらいウィンか?という言葉も、印象的だった。
仕事をしていて、時々確認することとして、「この話で、うちが困るとしたら、なんだっけ?」というものがあります。
最悪どうなるの?という思考は、やはり必要ですね。
5.交渉時の人格を変える
交渉の心理的なハードルを下げるには、自分のことだとは思わずに、代理人として交渉を頼まれたとマインドを切り替えるのがいいらしい。
嫌な奴だと思われたらどうしようとか、怒らせたらどうしようといった、余計なプレッシャーが軽減され、客観的に物事を考えられるようになるからだ。
交渉用の人格に切り替えて交渉にあたる。自分の中で「交渉する人」「分析する人」「意思決定する人」を分けてみる。強く押し切られて合意を求められそうになったら、自分だけでは決められないと伝え、持ち帰り検討をするという、一人時間差攻撃もなかなかよさそうだ。
だけど、ボクとしては、人間味がない感じになるのが、逆効果にならないかとも思う。
交渉のテクニックとしては、この本に書いてあるとおりだし、熱いロマンがそれをささえるのだろうけど、「この人が言うのだから」という、人間的な魅力や人と人のつながりは、交渉を圧倒的に楽にすると思うので、自分という人格を骨抜きにしてしまうのはリスクを感じる。
6.アンカリングと譲歩を使いこなす
最初に、自分が戦いやすい条件をオファーし、相手をアンカリングして、優位に交渉を進める。
ほんとは、5000円くらいで売りたいものを、最初に「30000円になります」と言えば、そこが交渉のアンカーとして働くのだ。
逆に、相手の提案はアンカリングではないかと疑う。まずは無視ぐらいでもよいくらい。
アンカリングの条件は、①高い目標、②現実的、③説明可能。あまりひどいアンカリングは相手を怒らせるから。
相手が譲歩をしてきたとき、魅力的な提案だったとしても、即座に受諾しないこと。「考えさせてください」で、相手側からさらなる譲歩が引き出せる。また、譲歩の背景を分析する。譲歩しすぎたと思わせないことも大切。もったいぶる。
「じゃあ、15000円にまけておきます」と言われたら、飛びついてしまいそうだけど、、
そして、ゼロイチ思考に陥れば、お互いにとってプラスとなる結果を生み出す方向に持っていくのが難しくなる。だから、
①争点を洗い出し、②それぞれの重要度を決めよう。
そうすると、自分にとって重要度は低いが相手にとっては重要な争点を譲歩したり、逆に譲歩されたりすることで、お互いにとっての目的を達成できる道を探れる。実は、彼はみかんの皮が欲しかったのだから、皮はあげて、実をゲットをできる状況にあるのかもしれない。
どんなに気まずくても、沈黙に耐えること。譲歩の引き出し合いでは忍耐が重要。
7.非合理的な人間に対しても感情的にならない
相手が非合理であっても、大切なのは、交渉によってどれだけ大きな実りある合意を結べるか。感情的になって、得られる可能性があったものが手に入らないということだけは避けるべきなのだ。それが本当に手に入れたいものだったらね。
冷静に対応していく心の使い方を身につける必要があるのだ。
8.交渉で世の中を変える
変革者はふつう非常に若いか、その分野に新しく登場した新人。古いパラダイムで決定される世界観やルールの中に、他の人たちほど深く埋没されてない。しがらみがない人だとのこと。
確かにそういう考え方があるかもしれない。やっぱり世の中は少しずつ変化していて、時には大きな外乱も起こる。その中で、よい社会を維持していくには、いろいろ変えていかないといけない。変えて行こうと言い出す人は、今の仕組みの中でおいしい思いをしていない若者、弱者なんだろう。
その弱者が動かないと、世の中は変わらないのだ。
そのために、交渉術という武器を磨くことが大切だという。この筆者、熱いわ。
まとめ
ということで、今日は「これだけは押さえておくべき交渉時の8つの基本」についてでした。まあ、テクニックとハートの両方が必要ですね。
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主観で書いてるところもあるので、気になった方は、是非原著を読んでみてください。