話をしたときに、相手が怒ってしまったり、自分の主張が受け容れてもらえなくて、もどかしい気持ちになったり、人とのコミュニケーションはなかなか思うようには行かないものです。
お客さんや会社の上司、後輩への話し方は、先輩や身近な人の話し方を無意識にお手本にすることが多いと思いますが、元NHKアナウンサーで、「正統派スピーチ」指導の第一人者である矢野香氏の著書「その話し方では軽すぎます! エグゼクティブが鍛えている人前で話す技法」の読書メモから、少し重みのある話し方のコツ18個をまとめました。
1.一貫性を持たせる
- 重みをもたせる要素は、「話し方と、あなたの印象の一貫性」。
- いかにも「言い出しそうな意見」を、いかにも「言い出しそうな切り口」で、いかにも「だしそうな声で」、いかにも「見せそうな表情」で、いかにもやりそうな「ジェスチャー」で、スピーチするから信頼されるのです。
- 信頼は、聞き手が期待している話し方をすることで積み重なる。
印象と話し方を一貫させるため、期待通りの話し方をするというのは、ちょっと意外でした。
期待通りとは「面白くない」という観念があって、「あ、こんな一面もあるんだ」という意外性を示すことの方がインパクトを残せるような気がしていたからです。
ビジネスでの、しかも、エグゼクティブとしての振る舞いとしては、一貫性が大事なのでしょう。
確かに、エグゼクティブには、「まぁ、そうだよね。」ということをおっしゃられる方が多いです。
2.与えたい印象に相応しい話し方をする。
- 好印象を与える要因は次の3つに分けられる。この3つの中でどれを自分の印象として一番強く表現したいか?を決めて、まずそれに必要なテクニックを身につけることを推奨している。
- ①親しみやすさ:話しかけやすい、優しい、元気な、面白い・・ :やや高めの声でゆっくりと話す。
- ②活動性:堂々とした、意欲的な、リーダーシップのある・・ :やや高めの声で速めに話す。
- ③社会的望ましさ:誠実な、安心できる、分別のある・・ :低めの声でゆっくりと話す。
トーンとスピードを使いこなそうというわけですね。ここでも、一貫性は気にするべきなのでしょう。
3.具体的に発言する。
- あいまいな発言はしない。
- 数字、固有名詞を示す。
- 情報源を明らかにする。(事実に裏付けをとる)
- 推測は話さない。(○○できそうです → ○○することを目標とします)
- 今の状況で言えることはなんですか?と聞く。
確かなことを、しっかりと述べるということですね。
4.事実と感情を分け、感情の発言は削除する。
- 事実なのか、感情なのかを意識する。
- 評価の言葉も削除する。(勝手に評価しない)
- 主語を明らかにし「○○と私は思います」と言えば、それは事実になる。
これも、事実を語るということですね。感情や評価は、要らないということです。
ちょっとつまらないけど。
5.言葉を正確に使う。
- 広辞苑などで間違った言葉使いをチェックする。
まぁ、これは基本なのでしょう。
6.絶えず動かない。
- 何度も頷かない。
- 自己紹介するときや相手の話を必死で聞く間は瞬きを我慢する。
頷きは、コーチングなどでの傾聴の基本でもありますが、すこし軽くみられてしまうという一面を知っておきましょう。
7.言葉の語尾をきちんと下げる。
- 考えながら話すなら、文を区切り、間を取る。
- イントネーションは、文のはじめが一番高く、だんだん下がっていくのが基本。
- 相手は音の下がり方で、話の終わりを予測する。
- 音が下がりきることで、話の切れ目や区切りを認識する。
だんだん下がっていくという意識はなかったです。しっかり喋るイメージが湧きました。
8.滑舌をよくする。
- 舌の筋肉を鍛える。
- 巻き舌。
- パラ、ピり、プル、ペレ、ポロ ・マラ、ミリ、ムル、メレ、モロ
噛まないように、舌の筋肉のトレーニングも大事なのですね。
9.高めの声で話さない。
- たまには地声を混ぜることで話に重みが出る。
雑談力の基本は、ファの音で、高めがよかったですが、重みを感じさせるにはやはり、たまには地声ですか。
10.頭を下げながら声を出さない。
- お辞儀してから、相手の目を見て挨拶する。
基本ですが、落ち着いてないと、なかなか難しい。
11.名刺はシンプルなデザインで紙質にこだわる。
ちょっとしたことですが、確かに名刺でセンスが伝わりますね。
12.敬語は全体ではなく文末のみとし、中立感を出す。
- 表情や話し方が大事。
- 丁寧になりすぎたり、ざっくばらんになりすぎたりしないように。
丁寧さと親しみやすさのバランスが大事なのでしょうね。
13.話し手のリズムを大事に聴き、眉毛でリアクションする。
- 相槌やメモを取るタイミングは、話し手の句読点。
- 眉毛のリアクションは一瞬。わざとらしくならないように。
これは、聞くときの態度の話。頷きすぎないで、うまく聴く。
たぶん、話を本気で聴いていたら、自然体でよいのでしょう。
14.予想外の事態でも曖昧な発言はしない。
- 十分に間を取り、自分の頭の中を実況する。
- 今後の対応を語る。 (予想外のご意見に、いま困惑しているところですが、現状を把握したうえで、お返事させていただきます)
- 適当な内容を即答したり、関係ないことを話して取り繕うのはダメ。
- 間を恐れない。
これを実践している同僚がいました。
確かに、取り繕うと相手にはわかってしまうし、しっかり間をとることが、誠実な態度に結び付いていると感じました。
15.幼い言葉を使わない。
- でも→しかし
- やっぱり→やはり ちょっと→少し (促音は避ける)
- ○○ね。→ ○○。(言い切る)
仕事をしていると、堅苦しくなりたくないシーンが多いので、少し砕けた言葉を使いがちである。状況と相手によって、しっかり意識して使い分ける必要があります。
16.「思います」ではなく、言い切る。
- 現状の事実で将来を言い切る。
- ○○だと思う。→ ○○です。
- 指導のときも、言い切る。その後、自分の信念や思想を加える。
つい、 柔らかく伝えたくなってしまいますし、何より、そうならなかったときに責められるリスクを考えてしまいますが、言い切ることを心がけましょう。
17.笑顔は大事だが消し忘れに注意
- 心からの笑顔ではないと思われ、信頼を失う。
笑顔が板につくくらいになったら、このことを思い出そう。
18.部下にもため口を使わない。
- ため口を使うと部下と対等になる。軽く扱ってよいという表現になる。
- 対等の相手にも、品格のため、ため口をつかわない。
これは、距離感を持ちたいときの話であり、ケースバイケースだろう。 まさに、エグゼクティブには必要なのかもしれないが、現場の声をできるだけ拾いたいリーダーにとっては、親しみやすさは大切である。
まとめ
エグゼクティブにふさわしい振る舞いとして、この本に語られていた、重みのある話し方のポイントをまとめてみました。
重みを感じさせた方が良いかどうかは、ケースバイケースです。
ただ、事実をしっかりとした口調で語ることが大事だということが、心に残りました。
その話し方では軽すぎます! エグゼクティブが鍛えている『人前で話す技法』
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